最高裁判所第二小法廷 昭和32年(あ)1573号 決定 1961年1月25日
主文
本件各上告を棄却する。
理由
弁護人宗宮信次、同真木桓、同川合昭三の上告趣意第一点について。
所論は事実誤認、単なる法令違反の主張であって、刑訴四〇五条の上告理由に当らない(なお、本件被告人両名の所為が強姦致死罪を構成する旨の原判示は正当である。殊に、被害者の直接の死因は凍死であるとしても、被告人らが被害者を強いて姦淫すべく、下半身を裸にして急激な寒冷にさらしたことを含む判示暴行行為により、異常体質者の被害者をショックに陥らせて死の転帰に動機を与え、且つ、ショックに陥った被害者をすでに死亡したものと誤信して田圃に背負い出して放置して凍死せしめた行動の附加により、相合して被害者を死に致したものであるから、被告人らの右所為は包括的に単一の強姦致死罪を構成する旨の説示は正当である。)
同第二点について。
所論は原判決の判例違反をいうけれども、引用の判例は、強姦行為終了後別個の意思発動にもとづき傷害を加えた場合であって、事案を異にし本件に適切でない。それゆえ論旨は採るをえない。
同第三点、第四点について。
第三点は単なる法令違反の主張であり、第四点は事実誤認の主張であって、いずれも同四〇五条の上告理由に当らない。
同第五点について。
所論は、司法警察員の嘱託にもとづいて作成された鑑定書の証拠能力を争う、単なる訴訟法違反の主張であって、同四〇五条の上告理由に当らない。しかも、記録(四七三丁)によれば弁護人は所論鑑定書を証拠とすることに同意していること明らかであるから、所論は採るをえない(なお、捜査機関の嘱託にもとづき作成された鑑定書には、裁判所が命じた鑑定人の作成した書面に関する刑訴三二一条四項を準用すべきものであるとすることは、当裁判所の判例である。昭和二八年(あ)第二四八二号、同年一〇月一五日第一小法廷判決、集七巻一〇号一九三四頁)。また記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。
よって同四一四条、三八六条一項三号により裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 藤田八郎 裁判官 池田克 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一)